オズの声が廃墟の遺跡に響く。


「…その日を境にあんたとは会えなくなった。図書館に来ていたウサギを問い詰めたら、“遠い町に引っ越した”と言われてな。…俺は、どうしてもあんたに会いたくて、ウサギの跡をつけたんだ。妹なら、ウサギと一緒に住んでいるんだと思ったから。」


私は、ぽつり、と彼に尋ねる。


「…まさか、それで不思議の国に迷い込んじゃったの…?」


オズは「…あぁ。我ながらバカだった。」とため息をつく。

そして、彼は事の真相を紐解く過去を口にした。


「不思議の国に迷い込んだ俺はウサギと運悪くはぐれてな。1人で国をさまよい歩いていた時に、“あの女”が俺に声をかけてきたんだ。」


(…!)


「…それが、トレメインさん…?」


オズは、こくり、と頷いて言葉を続ける。


「不思議の国に人間がいるとバレたら処刑される。…この先はあんたでも分かるだろ。俺は、この国のどこかにいるアリスを探すために、トレメインと“契約”を結ぶことで魔力を得た。…不思議の国に居続けられる力が欲しかったんだ。」