その時。
私が初めてこの国に来た夜に、偽物の笛を追い、オズと湖へ落ちた記憶が蘇る。
あの時、私を水面に引き上げたオズの腕の感触がどこか懐かしく感じたのは、封じ込められた過去の記憶とリンクしたからだったのかもしれない。
オズは、過去を思い出すように静かに続けた。
「その時、俺はウサギと知り会った。ウサギが魔法を使うのを初めて見たのもその時だ。ウサギはタオルや着替えを魔法で出して、俺たちを岸まで引き上げた。」
オズは、低い声で呟く。
「当時の俺はウサギをあんたのストーカーだと思っていたんだが、ウサギが“この子は僕の妹だ”なんて言ったから、まんまと騙されてな。…今考えれば、疑われないための嘘だったんだと思うけど…」
どうやら、私はオズと知り合う前からウサギさんと出会っていたらしい。
もちろん、その時の記憶も残ってはいないが。