…さらり。
その時、視界に“漆黒の髪”が映った。
(え…?)
首元に見える影に、はっ!とする。
思わず振り返ると、その先に見えたのは“本当のオズ”の姿だった。
“漆黒の髪”に、“藍色の瞳”。
顔立ちは全く同じなのに、初めて会う人のように思える。
姿を隠すために魔力を絶った彼の姿は、“人間”そのものだった。
私は、ぽつり、と尋ねる。
「これが…“本当の姿”なの…?」
私の問いに、オズは少し頬を染めて視線をそらした。
「…あんま見んな。…この姿を見られるのは慣れてねぇんだよ。」
そう言われても、整った顔立ちに思わず見惚れてしまう。
「オズは、どうしてこの国に…?」
私の問いに、オズは小さく呼吸をして答えた。
「…きっかけは、俺があんたと出会ってすぐの頃だった。町の近くにある池に2人で遊びに行ったら、はしゃいだあんたが池に落ちてな。」
「そ、そんなことあったっけ…?」
「あぁ。…あんたを助けようとした俺までびしょ濡れになって、死ぬかと思った。」