呆れたようにため息をついた彼は、低い声で呟いた。
「…あんたを人間界に帰す俺の計画が台無しだ。…どうしてくれるんだよ。」
しぃん、と辺りが静まり返る。
2人だけの世界に、私の声が響いた。
「…どうして、私を庇ったの…?」
その問いに、オズは少しの沈黙の後、呟く。
「…“好きな女の子”を守るためなら、誰だってこうするだろ。」
「!」
どくん…!
普段なら口に出すはずのない言葉が出た。
静かに動揺していると、オズは開き直ったように言葉を続ける。
「…あんたも、もう気付いてるんだろ?…ったく。今までの俺の告白を、他人のフリして聞き流しやがって…」
「ち、違う違う!」
私は、不機嫌そうなオズのセリフに必死で反論する。
「私は、確信が持てなかったの!オズが探す初恋の女の子が、私なのかどうか……」
そこまで言いかけて、はっ!とした。
自意識過剰で、恥ずかしい発言に言葉が詰まる。
すると、オズが私の首元に顔をうずめた。
熱い吐息が肌にかかる。
「…今さら、“知らない”なんて言わせない。」
オズは、誘うような甘い声で囁いた。
「“アリス”。」
「!」
「あんたなんだろ?…9年前に俺と出会った女の子は…」