ぐいっ!
「っ?!」
突然、背後から腕を引かれた。
思わず倒れ込むと、ぼすん、と背中から抱きとめられる。
(…!)
遺跡の物陰に身を隠すと同時に、ジョーカーの声が響いた。
『…?なんだ、誰もいないな。』
『東の方に逃げたのかもしれない…!』
戸惑いながら会話を交わすジョーカー達。
やがて、バタバタバタ…、と足音が遠ざかっていく。
(…よかった…)
ほっ、と息をついた瞬間、体に回された腕が、ぎゅうっ!と私を抱きしめた。
「!」
びくっ!と体が反応したその時、背後から小さな声が聞こえる。
「…っとに、あんたは…。…なんでまだこの国にいるんだよ…」
(…!)
その声に、ぞくり!と震える。
「…オ…」
彼の名を呼び、振り向こうとしたその時。
彼は、さらに抱きしめる腕に力を込めた。
「…じっとしてろ。」
囁かれた声に、どくん!と胸が鳴った。
身動きが取れないほど密着する体は、だんだん熱を帯びていく。
「…普通、国中に追われているお尋ね者の名前を叫びながら探しに来るか?名前を呼ばれてもホイホイ出て行けるわけねぇだろ、ばか。」
「ご、ごめんなさい…!」
怒っている口調ながらも優しく甘い声に、だんだんと体の力が抜けていく。
完全に彼に体重を預けると、そのまま遺跡の壁にもたれるようにして座り込んだオズは、すっぽりと私を抱きしめる。
「…何でここに来た。道に迷ったレベルで辿り着ける場所じゃないだろ。」
「それは…っ、オズに会いたくて、笛に居場所を聞いたから…」
「!……はぁ……」