…たっ、たっ、たっ…!


人気(ひとけ)のない古い遺跡をひたすら走る。

乱れる呼吸など気にする余裕もなく、辺りを見回した。


「オズ…!オズ…!!」


必死に呼びかけながら廃墟をまわるが、反応はない。


“オズは、国外れの古城に身を隠している。魔力では見つけられない。”


気配を絶っているオズを探し出すのは、夜空の星を数えることより難しく思えた。

ひんやりとした空気が頬を撫でる。


(…このまま、会えなかったら…)


…と、嫌な予感が頭をよぎった

その時だった。


『おい、こっちから足音がするぞ!』


(!!)


廃墟の陰から、複数人の足音が聞こえた。

だんだんとこちらに近づいてくる。


(まさか、ジョーカー…?!)


国外れの廃墟にまで捜索の手が及んでいたようだ。

私の足音をオズのものだと勘違いしているらしい。


(こ、こっちに来る…?!)


行き場を失い、どうすればいいのか分からなくなった

次の瞬間だった。