武器を片手に広場から各地に散っていくジョーカー。
私は、混乱を止めるすべもなく立ち尽くす。
その時、目の前に小さな影が見えた。
ふっ、と視線を移すと、そこにいたのは蜂蜜色の瞳の少年。
ばっ!
私は、リューイに勢いよくすがりついた。
心に溢れた言葉をそのままぶつける。
「どうして、オズのことを歌ったの?この世界に紛れている裏切り者は、私のはずでしょう…?!オズが人間だなんて、嘘だよね?!」
すると、リューイは静かに答える。
「…嘘じゃないよ。オズはこの世界の住人じゃない。」
「!」
「彼も、君と同じくこの世界に迷い込んだ、魔力を持たない“人間”なんだ。」
彼の言った言葉が、信じられなかった。
あまりの衝撃に声を出せずにいると、リューイは私をまっすぐ見つめて続けた。
「…オズは、トレメインがエラの正体を笛に歌わせようとしていることを知っていた。」
「え…?」
目を見開くと、リューイは静かに続ける。
「…実は、広場に来る前オズに会ったんだ。」
(オズが…笛を見つけていた…?)
「僕は今まで、ウサギの力を借りながら、トレメインに見つからないように逃げていたんだ。だけど、それももう限界で、彼女に捕まることは避けられなかった。…その時、オズが僕に言ったんだ。」
リューイは、蜂蜜色の瞳をわずかに細めて告げた。
「“エラの代わりに、俺を売れ”。」
(!!)
「“俺の問いは無しにしていい。その代わり、あいつを守ってやってくれ”…って。」