「みんな、“真実を歌う笛”を狙ってきた人なのかな…?」


「んー…今夜のオークションには他にも目ぼしいお宝が多く出品されるし…。みんながみんな、ってわけじゃないと思うよ。」


私の問いに、ウサギさんは、ちょうど空席があった列に入り、椅子に腰をおろして腕を組んだ。

楽しそうに背もたれにギシリ、と寄りかかる彼を横目で見つめると、ウサギさんは微かに口角を上げて続ける。


「ただ、“真実を歌う笛”だけを狙いに来てる人もいるだろうね。…僕らのようにさ。」


フードから覗く桜色の瞳が、挑戦的に細められた。


(この人…絶対楽しんでる…)


と、その時。

会場の照明がパッ!と落とされた。


(…!)


ざわついていた場内が、しぃん、と静まり返る。


「…きた。」


ウサギさんの低い声が耳に届いた瞬間。

会場の中心にあるステージが、パァッ!と照らされた。


『紳士淑女の皆様、ようこそおいで下さいました。これより、“オークション”を開催いたします…!』


ワァァァッ!!


歓声と拍手が起こり、会場の雰囲気が盛り上がる。

緊張感が高まる中。

“132”の番号札を胸元に付けたウサギさんがぼそり、と呟いた。


「…さぁ、アリス。闇取り引きの始まりだ…!」