急に恐怖心が込み上げ、血の気が引く。
本当は、今すぐにでも笛を奪ってやめさせたい。
本物だと証明された今、あの笛に私の正体を歌われたら、一巻の終わりだ。
スパイ容疑で“即逮捕”。
だが、不思議の国の住人が集まりジョーカーが警戒する中、目立つような行為をしたらそれこそ命取りだ。
(体が、動かない…!)
リューイが、ゆっくりとオカリナをくわえる。
彼が息を吹き込んだ瞬間
笛の音色が広場に響き渡った。
〜♪♫〜♩♬♪〜
紡がれる音は空気と混じって呼吸とともに体へ吸い込まれ、笛に刻まれた魔法陣が、パァン!とリューイの足元に広がる。
蜂蜜色の瞳が魔力を灯したその時、笛から、低いバリトン歌手の声が響いた。
『わたしは真実を歌う笛〜♪この世の全てをお見通し〜♫善も悪も全てを歌う、それがたとえ罪だろうと♩』