(!!)


視線を移すと視界に映ったのは黒いドレスと薔薇色の瞳。

どくん!と胸が大きく音を立てる。


「トレメイン…!」


隣で、チェシャが低く呟いた。

不敵な笑みを浮かべるトレメインさんに、トランプの腕章をつけた軍服の男たちが声をかける。


『あなたが、情報を提供した方ですか!』


『“真実の笛が見つかった”というのは、本当ですか?!』


どうやら、彼らが“ジョーカー”と呼ばれる警備隊のようだ。

すると、トレメインさんは目を細めて答える。


「…フフ…。もちろん、本当よ。“本物の笛”が、ここにあるわ。」


(!)


匿名のタレコミ主が、トレメインさんだったなんて。

黒いドレスの色気のある彼女が、闇を帯びて瞳に映る。


(“エラさん”を処刑に追い込み、私怨を持つ魔女。…結局、オズやウサギさんとの関係は分からずじまいだったけど…)


すると、その時。

ジョーカーの1人がせかせかと声をあげた。


『真実をを歌う笛は、一体どこに…?!持っているようには見えませんが?』


すると、トレメインさんはフッ、と笑って彼に答えた。


「…何をおっしゃるの?貴方達の前にちゃんと“いる”じゃない。」


(…え?)


その時、彼女の背後から“小さな影”が現れた。

亜麻色の髪に、頰のそばかす。

蜂蜜色の瞳が過去の記憶とリンクした。


「リューイ…?!」


彼の姿を見た瞬間、私は目を見開く。


『その少年が、何か…?』


ジョーカーの言葉に、トレメインさんは静かに答えた。


「この子こそが、みなさんが探し求めていた“真実を歌う笛”よ。」


「!!」