(どういうこと…?)
衝撃の事実に、体が震えた。
チェシャの言葉は、重々しく胸に響く。
「…9年前、エラはシオリビトとして人間界に通う中で、人間の男と出会い、恋に落ちた。…すごく、幸せそうな顔をしてた。」
小さく呼吸をしたチェシャは低く続けた。
「でも、エラのお父さんと死に別れ、愛されることにひどく執着していたトレメインは、自分よりも幸せになり、他人から愛されているエラを羨んで、嫉妬した。…だから、トレメインは“エラが人間の男と懇意になり、不思議の国の情報を流している”とジョーカーに密告して、エラを逮捕させたんだ。」
(…そして、スパイ容疑をかけられたエラさんが、そのまま処刑されてしまったってこと…?)
ぞくり、と震えが走った。
チェシャは険しい顔のままぽつり、と呟く。
「それから、トレメインは他人の弱みにつけこむことで自分の思い通りに動かせる“駒”を作り、無理やりにでも自分の側に置くことで“偽物の愛”を求めるようになった。」
(“偽物の愛”…)