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「あっ!お帰りエラ!…もー、急に飛び出していくんだもん、びっくりしたよ。」
ウサギさんの家へと戻ると、チェシャが待ちかねていたように私を出迎えた。
私は、尻尾をぴこぴこ振る彼に笑い返しながら、心の中で考え込む。
脳裏に浮かぶのは、オズとウサギさんの姿。
…彼らには、私が知らない“秘密”がある。
それだけは分かるのに、どうしても真相にたどり着けない。
“トレメイン”さん。
オズとウサギさんを繋ぐ一つの手がかりは、恐らく彼女にある。
その名前を口に出した瞬間、オズの表情が一変した。
オズも、彼女と知り合いだったのだろうか。
私は、ちらり、とチェシャを見る。
(…チェシャも、トレメインさんを知っているんだよね。)
しかし、ひどく彼女を嫌っている様子のチェシャに尋ねるのは勇気がいる。
「?どうしたの、エラ?」
私からの視線を感じたのか、くるりとこちらを向いたチェシャ。
(…この際だ。今、私が情報を聞けるのはチェシャしかいない。)
「ねぇ、チェシャ。」
「なぁに?」
きょとん、とローズピンクの瞳を丸くする彼に、私は意を決して問いを投げかけた。
「…トレメインさんって、何者なの…?」