(えっ!)
私は、突然、話に食いついて来たオズに戸惑いながら答える。
「う、うん。オズと会う前に、ガーデンで…。ウサギさんはそのまま帰っちゃったみたいだけど…」
すると、オズは早口で私に尋ねた。
「“笛”は…?!その時、ウサギは“笛”を持っていたよな…?!」
(“笛”?)
真剣な顔のオズに、私は記憶を遡る。
「ううん。“見つからなかった”、って言ってたよ。」
「…!」
私の答えを聞くなり、オズは「あの黒ウサギ…!」と低く唸った。
状況が掴めぬまま眉を寄せて彼を見ていると、オズは、ばっ!と私の肩を掴んで口を開く。
「昨日、ウサギと一緒にいたって女は、どこの誰だ?エラの知っている人なのか?」
私は、どこか焦っている様子のオズに、さらり、と答えた。
「たしか…“トレメインさん”って人だよ。」
次の瞬間。
オズが言葉を失った。
(え…?)
見たこともない緊迫した表情に、どきり、とする。
すると、オズはすっ、と、私から離れ、ソファから立ち上がった。
「…悪い、エラ。用事ができた。」
「えっ?」
オズは、ばさり、とコートを羽織り、襟を正す。
私の返事を聞く余裕もないように、オズは素早く家を出て行く。
「お、オズ?!」
引き止める手をするり、とかわし、オズは私の前から一瞬で姿を消した。
(…何なの、一体…)
しぃん、と静まり返った部屋に、オズの残した紅茶の香りが、ふわりと広がって消えたのだった。
第3章*終