それは、“私が欲しい言葉”だった。

オズは、私が12時を過ぎると魔力を失うことは“知らない”。

ただの人間であるアリスに戻った姿を見ていないはずなのに。


「…どうして、私にそんなことを…」


オズは、私から視線を逸らして答えた。


「“伝えてほしい”って、言っただろ。…あんたがアリスじゃないなら、ただの伝言として聞けばいい。」


(…“伝言”として、なんて…聞けないよ…)


本当は、全てを言ってしまいたい。

本当の名前を伝えて、彼との過去を聞いて、真実が何かを確かめたい。


(…オズが探しているのは、“私”なの…?)


そんな淡い感情にまとわりつくのは、“エラの影”。

もし、違っていたら…?

私は、ただ自分が不法入国した犯罪者であることを暴露しただけになる。

もしかしたら、私に魔力を預けたウサギさんや、事情を知るチェシャにまで危害が及ぶかもしれない。

オズは、優しい。

きっと、全てを話しても密告なんてしない。

だけど、今までの関係ではいられない。

彼は、“この国に生きる魔法使い”だから。

何があっても、私とは釣り合うはずがないんだ。