(!!)


どくん!と胸が鳴った。

緊張が体に走る。


(人間界で会った…?初恋の彼女に…?)


私は、耳を疑った。

ということは、オズの探す彼女は“人間”ということなのだろうか。

緊張感が高まった、次の瞬間。

オズは私の想像していなかった一言を口にした。


「…あんたは、“アリス”という名に聞き覚えはないか?」


どくん!!


心臓が大きく高鳴った。


(今…なんて…?)


オズから呼ばれるはずのない、“私の名前”が聞こえた気がした。

エラではない。

シンデレラの仮面を外した、“本当の名”が。

その時。

オズがさらり、と言葉を続けた。


「…前にも言ったが、ウサギはアリスのことを“妹”だと言っていた。おそらく、ウサギに連れられて人間界について来た女の子かもしれない。」


「!」


ガツン!


鈍器のようなもので、頭を殴られた気がした。

舞い上がっていた気持ちと淡い期待が、奈落の底へ突き落とされる。


(…バカだ…。何を勘違いしているんだ、私は…)