「…エラ。」


その時、ふと、オズが呟いた。

?、と彼を見た私に、オズは続ける。


「俺も、あんたに聞きたいことがある。」


「“聞きたいこと”…?」


どくん、と体が震えた。

彼は、カチャ…、とティーカップを置いて小さく呟く。


「すごく変なことを聞くけど…正直に答えてほしい。」


こくり、と頷くと、オズは少し躊躇しながら口を開いた。

彼の唇が紡いだ言葉に、時が止まる。


「…あんたは、人間界に行ったことはあるか…?」


「!」


息が止まった。

この動揺が彼に伝わっていないか、それだけが気がかりだった。


「…どうして…そんなことを聞くの…?」


わずかに震えた声に、オズはまつげを伏せた。

沈黙が部屋を包む。


「…悪い。…あるわけないよな。」


ぽつり、と聞こえたのは、オズの低い声だった。

突然の問いに戸惑う私を、彼は何かを考え込むように見つめている。

そして、オズは視線を逸らして小さく続けた。


「…実は、俺はこの世界に来る前、人間界にいたことがあるんだ。」