**


ごくり…


森を駆け抜けること数十分。

私は、オズのアジトの前まで来ていた。

不安と緊張から、ドクドクと胸が音を立てる。


(…勢いで来ちゃったけど…、いざ会うとなると勇気が出ない…)


私は、目の前の扉をノックする覚悟を決められず、うじうじと家の前で立ちすくんでいた。


(もし、私の正体がバレていたとしたら、オズはどういう反応をするだろう。)


私は、人間であることを偽り、オズに協力するフリをして彼を騙していたことになる。

笛を得るために彼を散々頼って、悪く言えば“利用”してきた。


(…“同志”の仲はもちろん解消されて…最悪の場合、ジョーカーに突き出されるかも…。)


…と、悶々とマイナスの思考を張り巡らせていた

その時だった。


「…いつまでそうしてんの。」


「わぁ?!」


突然、背後から声をかけられた。

びくっ!と跳ねて振り返ると、そこにいたのは不審がる視線をこちらに向けるオズ。

思わず言葉を失っていると、彼は眉を寄せたまま口を開いた。


「人ん家の前で何やってんだよ。何か用か?」


「え、えっと…」