…それにしても。

ウサギさんでも、チェシャでもないのなら、この毛布は一体誰がかけてくれたのだろうか。

私は、必死に昨日の記憶を遡るが、どうしてもガーデンで強い睡魔に襲われて意識を手放した所までしか思い出せない。

最後に見たのは、焦った顔のオズだった。


(…まさか、オズが私をここまで運んでくれたの…?)


その時。

はっ!とあることに気が付いた。


(私、昨日何時に帰ってきた…?!)


体は、朝日を浴びてエラに戻っている。

しかし、もし12時の鐘が鳴った後に真相を知る者以外が近くにいたのなら、私の正体がバレてしまっていることになる。


(オズに、見られた…?!)


さっ、と血の気が引いた。

ここは、人間が立ち入ってはいけない不思議な国だ。

もし、魔力の持たない人間がいることが知られたら、大変なことになる。


(…は、早くオズに確かめなきゃ…!)


「ごめん、チェシャ!私ちょっと出かけるね…!」


「えっ!エラ?!」


私は、居ても立っても居られず、オズのアジトに向かって家を飛び出したのだった。