「ピンポーン!せいかーい!」
眉を寄せる私に、ウサギさんは紙を見ながら続ける。
「これは、今夜開かれる“非合法の闇取り引き”でね。簡単に言えば、“ワクワクする内緒のオークション”だよ。」
(…つまり“バレたらやばいオークション”ってことだよね。)
「それ、やっちゃダメなんじゃないの…?」
「ふふっ、まーね!でも、禁じられた遊びほど楽しいものはないでしょ?」
この白馬で登場しそうな紳士系青年は、実は危ない黒ウサギだったらしい。
なぜ、この人がこんな裏情報を持っているんだろう。
じろり、と負の視線を送るが、ウサギさんはさらりとかわして言葉を続けた。
「実は、このオークションに例の笛が出品されるらしいんだ。」
「えっ!」
はっ!と顔を上げる私に、ウサギさんはニヤリと笑った。
「もし、このオークションで競り落とすことが出来たら…君は今日中に元の世界に帰れることになるね。」
(!!)
それを聞くなり、私は、ばっ!とウサギさんの手を取る。
目を見開く彼に、力強く言い切った。
「行こうっ!ウサギさん!案内して!」
「あはは!もちろんだよ!」
数分前までのよい子の私はどこへ行ったんだろうか。
だが、背に腹はかえられない。
元の世界に帰るため、私は悪い子にでもなんでもなってやる。
…こうして、私はこの、どこか胡散臭い適当ウサギに乗せられて、闇市へと向かったのだった。