小さく息を吐いて彼女を見つめる。

伯爵の魔力を感じてガーデンに駆け込んでエラがいることに気付いた瞬間、心臓が止まるかと思った。

その時、ふと彼女の胸元に目が止まる。

伯爵に手をつけられそうになったことが、シャツのはだけ具合から伺えた。


(…隙がありすぎるんだよ、ばか…)


一応あまり見ないように気をつけながら、シャツのボタンを留めていく。

もたもたとしてしまい素早くできないのは、俺の感情が乱れているせいだ。

…その自覚はある。


「…ん…」


「!!」


急に、エラが身じろいだ。

漏れた声に、反射的に体が跳ねる。


すー…すー…


(な、なんだ、寝言かよ…)


ドキドキと高鳴る心臓を抑えながら息をしたその時。

ガーデンでの彼女の言葉が、頭に響いた。


“オズのことが気になって…ここに来たんだよ…!”


どくん…!


エラが口にした言葉は、俺の予想していたものをはるかに超えていた。

エラが伯爵に触れられて、なぜか気に入らなかった気持ちも、何となく腹立たしかった気持ちも、その言葉を聞いた瞬間、吹っ飛んだ。


““オズだったから”…!”


“…!”


“オズだったから、私は抵抗出来なかったんだよ…!”