「オズ。」


その時、カグヤが俺の名を呼んだ。

顔を上げると、シラユキを背負ったカグヤが、言葉を続ける。


「後始末は俺に任せて、お前はエラを家まで送っていけ。…もしかしたら、運良くウサギと会えるかもしれない。」


(…!)


俺は、カグヤの提案にこくり、と頷く。

ふわり、とエラを抱き上げた俺は、カグヤに目配せをして歩き出した。

頭の中は、伯爵の残した言葉で埋め尽くされている。


(あの黒ウサギ…。笛を手に入れて何をするつもりだ…?)


コツ…コツ…


あらゆる疑念を浮かべながら足を進めていた

その時だった。


「!オズ。」


再び、カグヤに呼び止められる。

「…何だよ」と顔だけ振り返ると、カグヤは目を細めて答えた。


「ちゃんと帰って来いよ?」


「?」


きょとん、とまばたきをすると、カグヤは俺の思考を吹っ飛ばす爆弾発言を口にした。


「女の子の寝込みを襲うのは犯罪だからな。」


「襲わねぇよ!!」