俺は、「悪い悪い」と平謝りをするカグヤをジッと見つめる。

すると、カグヤはすっ、と視線を移して口を開いた。


「まぁ、“情報源”だけは残したから大目に見てくれよ。」


カグヤの視線の先にいるのは、睡魔に襲われている様子の伯爵だった。

戦意をすっかり失った様子の彼へ、俺はツカツカと歩み寄り、声をかける。


「…さ、後はあんただけだ。部下はもう来ないぞ。」


『くっ…!』


こいつには言いたいことが山ほどあるが、うかうかしているとカグヤの魔法に侵食されて眠られてしまう。

俺は、地面に座り込む伯爵に低く尋ねた。


「この屋敷に“真実を歌う笛”があると聞いた。…今、笛はどこにある?」


すると、伯爵は観念したかのようにぽつり、と呟いた。


「…もう、笛はここにはない。パーティに顔を出した“客人”が持ち去った。」


(!)


思いもよらぬ発言に、カグヤも眉をひそめる。

俺は焦りを感じたが、動揺を必死で抑えながら彼に再び尋ねた。


「“客人”って、誰のことだ…?そいつは、今どこにいる…?!」