ウサギさんは静かに語り出した。
「この国には“真実を歌う笛”というものがあってね。誰でも一度だけ、知りたいことをその笛に問うことが出来るんだ。」
(…!…ということは…)
私は、目を輝かせながら彼に尋ねる。
「笛に問えば帰り道が分かるかもしれない、ってこと?」
ウサギさんは、わずかにまつげを伏せた。
「聞いてみれば分かるよ。」
彼は、どこかはぐらかすようにそう言ったが私はそんな微かな違和感に気が付かないほど浮かれていた。
(国中で噂になるほどなら、人間界への抜け道を探すより情報が集めやすいかもしれない。)
すると、その時。
ウサギさんは鞄から1枚の紙を取り出した。
丁寧にたたまれたその紙を開きながら、彼は口を開く。
「これを読んでごらん。僕が調べた、笛についての有力な情報だよ。それも最新。」
「!えーっと…」
私は、その内容を見て目を見開いた。
「…や、“闇市”…?」