(…!)


オズが、ちらり、と視線を落とした。

少しはだけた胸元を一瞥した様子の彼は、すぐに目をそらして、ばさり、とコートを脱ぐ。


…ふわっ!


彼のコートが肩にかけられた瞬間。

私の視界が揺らいだ。


ぼすん…!


抱き寄せられる体。

服越しに感じる彼の体温。

目を見開いたその時、オズが私の耳元で、ぼそり、と囁いた。


「…何、簡単に触らせてんだよ……」


苛立ちにも似た声のトーンに、どくん、と胸が音を立てる。

深く呼吸をしながら感情を落ち着かせている様子の彼にされるがまま体を預けていると、オズは、ふっ、と私を離して口を開いた。


「…あんた、ウサギから笛の情報を聞いたのか?」


(!)


その瞳は、完全に怒っている。

私は、戸惑いながらおずおずと答えた。


「か、カグヤから聞いたの。…今日、シラユキくんと公園で会った時に…」


「!」


私の答えに、オズは「あいつら…」と眉を寄せる。

そんな彼に、私は思わず言った。


「2人は悪くないよ…!私が、自分の意思でここに来たの!」


すると、オズは一層機嫌が悪くなったように口を開く。


「…武器を持った悪霊が、うじゃうじゃいる所に自分から来たってか?あんたは本当に学習しないな!また、笛が欲しくて無茶したんだろ…!」


「!違う!」


つい、声をあげた。

オズの言葉を遮って、口から言葉が溢れる。


「オズが、初恋の女の子を探すつもりでパーティに潜入するんだって思ったから!」


「!」


「オズのことが気になって…ここに来たんだよ…!」