「オズ…?!」


目の前に見えたのは、エメラルド色の瞳。

紺碧の髪に、整った顔。

それは、紛れもなく私の知る“オズ”だった。


(どうなってるの…?!)


動揺を隠しきれず彼を見つめていると、伯爵はニヤリと笑って口を開いた。


『…素晴らしいだろう。これは、私の姿が“貴様が望む男の姿”に変わって見える幻影魔法だ。』


「!」


どくん、と胸が鳴る。

伯爵の声は、聞き慣れたオズの声そのものだった。

すべてが、記憶の中の彼と重なる。

私の背中に回す腕に力を込めた伯爵が、そっと耳元で囁いた。


『“オズ”…。それが、この男の名前か…?』


「…!」


動揺に揺れる私の瞳に、“オズ”の姿が映される。

伯爵は、そんな私の態度に確信を得たように、ふっ、と笑って言葉を続けた。


『貴様は、この姿の私の牙を拒めない。』


つぅ…っ


伯爵の手が、私の背中を撫でた。

縮まる距離に、思考が働かない。

まるで、私の体自体が魔法で支配されているかのようだ。