確かに、今宵のパーティは“花嫁候補”を探す集いであり伯爵の言い分はすこぶる正しい。

しかし、私は彼の花嫁になるためにここに来たのではない。

私は、覚悟を決めて彼に告げた。


「私は、“真実を歌う笛”がここにあると聞いて来たんです!だから、花嫁候補になるわけには…」


するとその時。

伯爵が、小さく息を漏らした。


『…ほぉ…。それは残念だな。ここにはもう笛はない。“客人”に渡してしまったからな。』


(!!)


はっ!と目を見開いた。

伯爵から告げられた重要な証言に、緊張感が高まる。

それはつまり、“真実を歌う笛”が実存し、この世界には本当にその魔法の品を所有する者がいるということだ。


「“渡した”?!一体誰に…!」


がばっ!と彼のマントを掴む。

すると、伯爵は、すっ、と私の手を取った。


『…知りたいか?』


(…!)


動揺して顔を上げた瞬間。

伯爵は妖麗な笑みを浮かべ、低く言った。


『貴様が、すべてを私に差し出すと言えば、笛を持ち去った奴の情報を流してやる。』