(!)
1人でガーデンの闇に消えていくリューイ。
独りぼっちの空間がしぃん、と静まり返り、彼の言葉が頭の中をぐるぐるする。
ひどく現実味がないこの数分の間に起こった出来事が、まるで夢であるかのような感覚に陥った。
…と、その時。
(痛っ!)
ちくり、と指先に痛みを感じた。
見ると、バラの棘で出来たらしき傷から血が出ている。
ウサギさんと彼女のやりとりに夢中になっていた私は、茂みに隠れていた時に怪我をしていたらしい。
つ…、と、私が小さな傷から流れる血を拭った
次の瞬間だった。
ブワッ…!
突然、辺りに大きな魔力が放たれた。
(!何…?!)
私が、はっ!と身構えたその時。
ガーデンの夜闇から、低く凛とした声が響く。
『…誰だ。』
(!)
ばっ!と顔を向けると、その先に見えたのは漆黒のマント。
青白い肌が月明かりに照らされる。
「伯、爵…?」
ぽつり、と無意識に声が出た。
目の前に現れたのは、カグヤと別れる前に屋敷で見た今夜のパーティの主催者、“ドラキュラ伯爵”。
彼は、隠された仮面の奥から鋭い視線をこちらに向ける。
『…私の庭に迷い込んだ女がいるとはな。…貴様、今夜の招待客の1人か…?』