「ここで会うなんて偶然だね。調子はどう?」


「げ、元気ですけど…」


姿をくらませていた彼は、数時間ぶりに会ったかのような態度でさらりと私に声をかけた。

コツコツ、とこちらに歩み寄るウサギさんに私は尋ねる。


「どうしてここに…?」


「ん?決まってるでしょ。アリスと同じさ。」


(…!やっぱり、ウサギさんも笛を探しにきたの…?)


穏やかな表情を浮かべるウサギさんに、私はぽつり、と呟いた。


「この屋敷に笛があるって噂、ウサギさんも知ってたんだ?」


「うん。シラユキくん達に情報を流したのは僕だからね。」


情報源が目の前の彼だったことを知り、ウサギさんがここにいる状況に納得がいく私。

すると、ウサギさんは微かにまつ毛を伏せて小さく続けた。


「…だけど、屋敷中を探し回っても、結局笛は見つからなかったよ。このガーデンにもないみたいだ。」


(えっ?!)


思いもよらない彼の言葉に、私は急いで反論する。


「でも、私たしかに聞いたよ?さっき、このガーデンから笛の音が聞こえるのを…」


「……へぇ。空耳じゃないかな?」


(そんな…。確かに聞いたはずなのに…)