月明かりに照らされる影は、想像以上に“小さい”。

そこにいたのは、ウサギさんでも悪霊でもなかった。


(…男の子…?)


棺桶の中には、すやすやと寝息を立てる“少年”がいた。

ふわふわとした亜麻色の髪。

白いシャツに、茶色の膝丈パンツ。

つやつやの頰にはそばかすがある。


(…どうして、こんなところに…?)


棺桶の中には、“どこかで見覚えがあるおもちゃやガラクタ”が詰め込まれていた。

小さな子ども部屋のような棺桶に、ぞっ、とする。

ひどく不気味な棺桶をじろじろと見つめていると、ふっ、と少年が瞼をあげた。

蜂蜜色の瞳が、ゆっくりと見開かれる。


「「…!」」


ぱちり、と目が合った瞬間。

何故だか、声が出なかった。


「…だぁれ…?」


「!」


少年の問いに、はっ!とする。


「えっと…、わ、私はエラといって…」


と、そこまで言いかけた瞬間。

ゆっくりと起き上がった彼の口から想像もしていなかった一言が飛び出した。


「…おねえちゃん、“アリス”、でしょ…?」


「!!」


(…なんで私の名を…?!)


どくん!と胸が鳴ったその時。

コツ…!と、1つの足音が辺りに響いた。


「…あれ?アリス?」


「!」


扉の向こうから現れたのは、白い髪の青年。

いつもの白いシャツに薄いコートを羽織っている。


「ウサギさん…!」