目を見開く私を見て、ウサギさんはニコニコ微笑んでいる。
「その姿でいるときは“エラ”と名乗るといい。僕以外と話すときは、本名を明かしてはいけないよ?」
私は、こくりと頷いた。
するとその時。
彼はすくっ、と立ち上がり、どこからか“かぼちゃ”を持ってきた。
(…まさか……)
“シンデレラ”、“魔法使い”、“かぼちゃ”とくれば大体予想がつく。
お決まりの展開にドキドキ胸が鳴り出すと、ウサギさんはすっ、と“かぼちゃ”に手をかざした。
パァァッ!
空色の魔力がかぼちゃを包む。
はっ!としたその時。
むくむくと巨大化したかぼちゃは、みるみるうちに“かぼちゃの馬車”へと変貌した。
大きな車輪。
細やかな装飾。
全てがかつて絵本で見た通りだった。
「わぁっ!すごい…!!」
ウサギさんは、はしゃぐ私に優しく声をかける。
「これが、君に預けたシンデレラの魔力だよ。作りたいものをイメージすると、生き物以外をなんでも作り出すことが出来る。」
そして、ウサギさんは「ただし」と目を細めて続けた。
「君の魔力が持つのは、12時の鐘が鳴るまでだ。日付が変わったら作り出したものは全て消え、君の姿もアリスに戻る。…朝日がのぼれば、また魔力は回復するけどね。」
(朝になれば、またエラに戻れるってことね?)