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微かに、笛の音が聞こえた気がした。

誘われるように窓の外を見ると、闇夜に包まれるガーデンに、1人の青年の姿が見える。

その光景を見た瞬間、私は目を見開いた。


「…ウサギさん…?!」


バラ園に映える白い髪と茶色のロングコートには見覚えがあった。

最近姿を見せなかった彼が、なぜここにいるのだろうか。

笛の音は、確かに彼のいる方向から聞こえてくる。


(まさか、笛を探しに…?)


「どうした?エラ。」


はた、と足を止めた私を、カグヤが、ちらり、と見た。

私は、ガーデンの奥への入っていくウサギさんから目が離せない。

カグヤへ答えながら、無意識に足が動く。


「ごめん、カグヤ!私のご飯、取っておいてくれる?」


「えっ?」


「笛の音が聞こえるの!ウサギさんを見失う前に追いかけないと…!」


私は、目を見開くカグヤの返事を聞く前に走り出していた。

そして、神秘的な魔力を放つガーデンへ向かって1人、屋敷を飛び出したのだ。