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「わぁ…!すごい…っ!」
時は午後8時。
私はカグヤに連れられ、パーティ会場に潜入していた。
「ねぇ、オズにはなんて言い訳して来たの?」
私の問いに、カグヤはさらりと答える。
「ん?“落とし穴に落ちて抜け出せない”って。助けに行ってやろうか?って言われたから、ジョーカーに救助を頼んだって言っておいた。」
「…。」
どうやらカグヤは、オズでなければ到底信じてもらえないような適当な言い訳をつけてここに来たらしい。
ジョーカーも、そんな依頼を受けたら困るだろう。
と、その時。
カグヤが何かに気づいたように、眉を動かした。
彼はそっ、とかがみ、私に囁く。
「見えるか、エラ。…あそこにいる男が、噂の“ドラキュラ伯爵”だ。」
彼の言葉に顔を上げると、壇上の玉座に座っている漆黒のマントを羽織った男性の姿が見えた。
青白く透き通った肌で、目元に仮面をつけている。
素顔を見せない状態で、手下とともに会場の様子を伺っているようだ。
(あれが、“ドラキュラ伯爵”…?)
私は招待客で賑わう会場を見つめながらカグヤに尋ねる。
「…ここにいる人は、全員“花嫁候補”なの…?」
「あぁ。ここにいる女性達の中には、自ら花嫁候補に名乗り出たのもいるらしい。」