「契約…?」


私は、ぽつり、と呟いた。

ウサギさんは、笑みを浮かべたまま穏やかに続ける。


「君がこの世界に来てしまったのは、少なからず僕のせいでもあるからね。お詫びに、僕が君を魔法使いにしてあげるよ。」


(…!そんなことが出来るの…?!)


絶望の中に、一筋の光が差し込んだ。

目の前の白いウサギさんが天使に見える。

彼は私を見つめたまま、すっ、と私に近づいた。

そして、どこか妖麗な声で私に囁く。


「いいかい、アリス。君に、シンデレラの魔法を授けよう。君の名前は、今日から“エラ”だ。」


…ちゅっ


(!)


髪の毛に落とされた軽いキス。


ポゥ…ッ!


体に、淡い空色の光が灯る。

じんわりと体が熱くなった瞬間、彼は、ふっ、と目を細めて呟いた。


「…うん、容姿は完璧だね。」


(え…?)


ウサギさんから差し出された手鏡の向こうには、見知らぬ“少女”が映っている。

服装は水色を基調としたワンピースに白のコート。髪の毛は軽くウェーブのかかった銀髪で、瞳は澄んだ空色である。


(これが…“私”…?)