思考が停止した。

私は、動揺を必死で抑え、深呼吸をする。


「ええっと…、ウサギさんはこの世界と人間界を行き来する“シオリビト”なんでしょう?」


「そうだけど、いつも人間界へ行く時はシオリビト専用の扉を通って行くからねえ。秘密の抜け道とかは知らないんだよ。」


(…!)


急に不安がこみ上げる。


「その扉って、私は通れないの?」


「シオリビトの扉はジョーカーがうじゃうじゃいる城にあるからねえ。扉をくぐる前に、君が人間だってバレるだろうね。」


(う、嘘でしょう…?!)


目の前が真っ暗になった。

家に帰ることも出来ず、この国で生涯を終えることになるなんて。

しかも、“処刑”。


(信じられない、ありえない…!17歳で死ぬなんて、最悪だ…!!)


と、その時。

ウサギさんがぽん、と私の肩に手を置いた。

顔を上げる私に、彼はにこりと微笑む。


「大丈夫!アリス。君がこの国にとどまる方法が一つだけあるよ。」


(…!)


ウサギさんは、ぽぅ…!と桜色の瞳を輝かせた。

そして、私をまっすぐ見つめて告げる。


「僕と魔力の契約を結ぶんだ。」


(え…?!)