(なるほど…。)


私は、彼に躊躇しながら尋ねた。


「貴方も、この世界の住人なの…?」


「うん、そうだよ。僕は“ウサギ”と名付けられた魔法使いだからね。」


芝生に降りた私は、戸惑いながら彼を見つめた。


(ウサギさんも魔法使いなら、どうして人間界にいたんだろう?)


すると、ウサギさんは私の考えを察したかのように口を開く。


「本来、この世界の住人は人間界に行くことが禁じられているんだ。だけど、僕は特別。人間界で生まれた新たな童話を集めて、その物語の住民をこの世界に連れてくる役目。…“シオリビト”を国から任されているからね。」


(へぇ…、そんな役目があるんだ?)


そういえば、図書館でウサギさんが借りていたものも、童話コーナーにある本だった。

彼は、この世界の“管理人”のような存在らしい。

感心して彼を見つめていると、ウサギさんは桜色の瞳に私を映して続けた。


「でも、君がここにいるのは少し問題だなぁ。」


「え?」


ウサギさんは、微笑みを崩さないまま、さらり、と告げる。


「人間がいると知られたら、君はスパイ容疑で
処刑されてしまうよ。」