「えっと………。
す、すみません。分かりません……」
絞り出そうとしたけど、無理だった。
「ははは…
俺の名前は、加藤 佑真【かとう ゆうま】
ちなみに、山口さんの後ろの席なんだけど。」
「か、加藤くん!
本当にごめんなさいぃぃ!」
「ふっ。
もういいよ。
俺の名前、佑真でいいから。」
「あ、はい!」
「…あと、敬語いらない。
それと、家まで送るよ。
危ないし。」
「だ、大丈夫だよ!
本当に、申し訳ないし…」
「いいから、いいから。家どこ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて…。」
それから、色々なお話をして私の家に着いた。
「ありがとう!
じゃあ…」
「待って!携帯持ってるよね?
ちょっと貸してくれない?」
「え?うん?」
訳もわからず携帯を貸すと慣れた手つきで操作する佑真くん。
「はい!俺のLINE登録しといたから。
いつでも、連絡してきて!」
「うん、ありがとう。
じゃあね。」
「また明日!」
その日は、友達が出来たことを喜びながら寝てしまった。
これから、起こることも知らずに…
朝、学校へ行くために家を出たらいつも真顔で待ってくれている翼が、不機嫌オーラ全開で待ってくれていた。
「お、おはよう…
ごめんね?遅かった?」
「……。」
今日も無視か…
「なぁ、昨日の男誰だよ」
……ん?
昨日の男…?
「あ!佑真くんのこと?
昨日、帰ってる途中で話しかけられて…
それで、一緒に帰ったの。
佑真くんがどうしたの?」
「……別に。」
聞かれたことを話しただけなのに、不機嫌オーラが増した。
本当にどうしたんだろう?
私だって、昨日の中村さんとの事も気になる…。
「あのさ、翼?
昨日、なんで一緒に帰れなかったの?
その…中村さんと帰ったの…かな?」
「お前には関係ない」
「そんな言い方ないじゃん!
私だって、不安になるんだよ!!」
「………。」
「もういいよ!!」
そう言って私は、走って逃げてしまった。
だって、冷たい言い方しなくてもいいよね。
私だって、昨日帰れなかったんだから知る権利くらいあるよね。
そう、涙を堪えていると
「杏ちゃん
おはようー」
「佑真くん…」
「?!どうしたの?!
泣きそうじゃん!!何かあった?!」
ずっとアワアワしてる佑真くん。
「ふっ。」
「え?なになに??
なんで、笑うの?!」
「だって、そんなに慌てなくても…。
でも、ありがとう。
元気出た!」
「えぇ?
俺なにもしてないよ??
でも…どういたしまして?
また、何かあったら相談してね!
いつでも、乗るから!」
「ふふ。ありがとう!
優しいね!佑真くん!」
そう、笑いかけるとやっぱり、佑真くんと一緒にお話するのは楽しかった。
あれから、1週間がたった。
翼とは気まずくなって一緒に登下校もしなくなった。
佑真くんとは、すごく仲良くなって色々相談も乗ってくれて、登下校もするようになった。
「杏ちゃん、帰ろー!」
「うん!」
「おい、杏。
ちょっと来い。」
「え?ちょっ!翼?!」
翼に手を捕まれてどこかへ連れていかれた。
「ご、ごめんね!佑真くん!
先、帰っといてっ!」
「え、あ、うん!」
「ねぇ。ねぇってば!
どこに連れてくつもり?!」
「…うるせぇ。黙れ。」
そういえば、私この前喧嘩したんだよね。
それから、話しかけなかったくせに今さらだよね…。
「ごめんなさい…」
シュンとしていると
「てぶっ!」
急に翼が止まったから、背中にぶつかってしまった。
「どうし…「お前、あいつがよくなったのか?」