「あのな、伊藤明日香っていうんだー」



「...誰?」



名前だけ言われて分かる訳がない。



「か!の!じょ!」



「あー、はいはい」



...だから何?!わざわざ傷をえぐるようなことしなくてもよくないですか?



「ねー、何か言いたいこととかないのー?」



...山ほどあるよ。でも、そんなこと、言えるわけがないし、言う資格なんてない。




ブーブーッ



携帯、バイブにしてたんだった。



ナイスなタイミングでかかってきた電話。



「もしもし?」



『ちゃんと家に着いた?』



「着くよ!エレベーター乗るだけじゃん」



『よかった。ってゆうのはまぁ、口実で。本当は声が聞きたくなったから。』



そんな言葉の1つ1つに胸が踊る



「あ...りがとう、ナオ。」



そう答えるのが精一杯で、どんどん顔が赤くなっていくのを感じる。