マロンを箱にまた入れて、

さっき見つけた場所へ向かった。

「マロン、ごめん・・・ごめんね・・・。」

と心の中で何回も何回も言った。

場所へ着き、

私のお気に入りの毛布をマロンにかけて、

雨に濡れないように

屋根のあるところへ置いた。

「マロン・・・。バイバイ!誰かに見つかるといいねぇ・・・。」

マロンは私をジーッと見る。

私は涙を抑えきれず、声をあげて、泣いてしまった。

「マロン・・・。」

私はマロンのからだを撫でる。

すると、後ろから誰かにたたかれた。

「キャッ!」

後ろを振り向くと立つのは

お母さんだった。

お母さん『何泣いてるのよ。まったく。バレバレなんだから隠さなくていいのよ?』

お母さん・・・?どーゆー意味?紫音、分かんない・・・。

「・・・。」

私は黙ったままだった。

『さっき、玄関にいるとき、この子が吠えたのを聞こえたのよ。あんたの笑い声や、話し声も。あんた、お母さんが家に入ったとき、この子を隠してたでしょう?』

私は頷いた。

『隠すなら、見えないようにしないと。しっぽ、見えてたわよ。マロンちゃんの。』

「お母さん・・・うぅ・・・ごめんなさい・・・うわーーーん・・・。」

『あんたって子は。』

私はお母さんの胸に飛び込んで、思いっきり泣いた。

大槻 紫音、5才。

お別れの辛さを知ったのは、マロンのおかげだった。

『わんっ!わんっ!』

マロンはしっぽをフリフリとさせながら、吠える。

何を言いたいのだか。

『可愛いわね。・・・さーて、紫音。マロンちゃんを、ここに置いとくわけにはいけないでしょう?おうち・・・もって帰ろっか。』

え・・・?

「い、いいのっ?で、でも・・・おうち、マンションだから・・・飼えないんでしょ?」

『何言ってんのよ。お母さんがそう言ったのは、紫音が小学生になったら犬を飼うつもりだったからなのよ。プレゼント・・・したかったの。お父さんと。』

お母さん・・・大好き!

「お母さん・・・ありがとぉ・・・。」