10年後。




「ママーッ」



子供の自分を呼ぶ声がして、



あたしは振り向く。




あたしは微笑んで、その子の名前を呼んだ。




「おいでっ、聖!」




胸に飛び込んできた子供、聖を、



あたしは強く抱きしめた。




「おーい、走ったら危ねぇぞー」




前を見ると、笑顔の彼がいた。



あたしはその人に、笑顔を返した。




「大丈夫だよ、幸太」




あたし達は顔を見合わせて、ふっと笑った。




あたしは、小さな声で呟いた。




「あれから・・・10年が経つんだね」




「・・・早いもんだな」




いろんな障害を乗り越えて――



ここまで来た。



もちろん、あたし一人では無理だったかもしれない。



だけど、あたしを支えてくれる人がいたから・・・



今、こうしていられる。





聖が



死んでから――



あたしは真っ暗闇な世界にいた。



だけど、光をくれる人が



手を差し伸べてくれる人がいたから



こんな幸せをかみ締めていられる。




聖・・・見てる?




あなたと過ごしてきた日々は




決して無駄なんかじゃなかった。




あたしにとって



大きな宝物となりました。




それはきっと




いつまでも変わらない。