【間宮旬】


「なっ⁉︎」


綱を握った俺は、思わず後ろを振り返った。


2本目は直人に加勢してもらったが、綱引きは後ろが重要だと再度、男子をみんな後ろに固めた。


だから俺のすぐ後は、相原友子だ。


もちろん、相原も驚いている。


1本目、2本目ともに白組の先頭は、戸田裕貴と野々村哲也のヤンキーコンビだった。2人が鋭い眼光を向けてくるだけで、及び腰になってしまう。だからあえて俺が先頭に立って、ガンを受け止め睨み返していた。


それなのに__。


「奈々、頑張ろう」


前から2人目の伊藤明日香が、励ましの声を掛ける。声を掛けられたほうの清水奈々は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


これは何かの罰ゲームだろうか?


さっき足を滑らせた罰として、1番前に?何のために?やはり1番前は、つま先を地面に刺す思いで踏ん張らないといけない。だから男子のほうが適任のはず。


ひょっとしたら、奈々の泣き顔で俺たちの戦意を失くす作戦か?


それで俺たちが同情するとでも?


確かに気の毒だが、それで手を抜いたら結局、俺たち紅組から失格者を出さなければならない。しかも自分たちの手で、だ。


だから俺の目は、真っ直ぐ奈々を射抜く。


「それでは最後の3本目。よーい___」


パン‼︎