【戸田裕貴】


「イッテ‼︎まじイッテー‼︎クソが!もうちょいで勝てたのによー‼︎」


俺は拳を握ったり開いたりしながら、涙目で俯いている清水奈々を睨みつけた。


こいつさえ滑らなかったら、勝ってたに違いない。


「ああ、まじムカつく‼︎次はぜってー勝つからな‼︎」


肩を回し、綱を持ち上げた。


俺が勝負事に負けるなんてあり得ない。勝って勝って勝って、勝ち続けてやる。たとえどんな汚い手を使ってもいい。俺の邪魔をするやつは、ぶっ飛ばすのみ。


当たり前のように先頭の綱を握り、紅組どもにガンを飛ばした。


「ちょっと、場所を変わって」


「ああん⁉︎」


振り返ると、俺よりデカい女が立っていた。


こいつ、何センチあんだよ?顔は悪くねーのにな。そこらへんの女とも違い、肝も座っている。この俺に指図するくらいだからな。


俺は立花薫に向かって、片方の眉を吊り上げた。


「場所を変わる?俺が先頭じゃなきゃ負けるだろうがよ?」


「あんたが先頭なら、次の3本目は勝てないわ」


「なんだとー‼︎てめぇ、ちょっとデカいからと思って調子こいてんじゃ__」


「清水さん、あなた先頭に行って」


顔色一つ変えず、薫が清水奈々に言った。もちろん清水奈々は目を見開いて驚いている。


「おい‼︎さっきこいつ滑ったんだぞ!こんな奴が先頭じゃ、勝てるもんも勝てねーだろうが‼︎」


「違うわ。彼女が先頭じゃないと、次は勝てない」


そうはっきり、薫が宣言をした。