【戸田裕貴】
「てめぇ‼︎ざけんなよ、ババァ‼︎」
失格者だと名前を呼ばれた瞳が立ち上がり、食ってかかる。
その形相は鬼だ。
こりゃ、もう手がつけられない。
咄嗟に判断した俺も立ち上がり__。
「おいこら!出て来いや‼︎」
瞳以上の剣幕で校舎に向かってガンを飛ばす。
俺もそうだが、特に瞳は他人から見下されるのを嫌う。
まして【失格者】の烙印をおされ、見境なしに暴れても不思議じゃない。
ただ、あながち外れてもいないと思った。
唯一、瞳だけが地面に寝そべって煙草を吹かしていたからだ。
俺も哲也も、おざなりに体操はした。他の奴らなんてバカみたいに踊ってたじゃねーか。
とはいえ、ここは本人より何倍も怒り狂って、仇を取ってやろう。
「隠れてねーで、出て来いやクソ野郎がよー‼︎」
「悪いけどあたし、マジで許さねーから」
「おし、こっちから乗り込んで袋叩きにしてやろうぜ‼︎哲也、行くぞ‼︎」
「おう‼︎」
肩を怒らせて校舎に駆けていく哲也の背を、俺と瞳も追った。
__ん?
その時、わずかな振動が俺の足を立ち止まらせる。抱いていた瞳の肩が揺れたんだ。
途中で哲也が振り返った。どうした?早く行こうぜ?と。
だから俺も振り返った。
その場に崩れ落ちていく瞳を__。