気が付けば、視界の中に握り拳が見えた。


誰の手?


雄大?


成美?


……違う。


これは、あたしの握り拳だ。


まるで右手だけが他人のものになってしまったような感覚だった。


突然視界に見えたあたしの右手は、あたしの意思とは関係なく洋二の顔を殴りつけていた。


手ごたえを感じると同時に、洋二の体が横倒しに倒れ込む。