私が自分の机の上から
取り上げたのは
彼には少々ラブリーすぎる
キャラクター物の
ピンクのメモ。

彼はメモに伸ばしかけた手を
途中で止め
戸惑った顔で私を見た。

まだ私とさほど違わない身長。
眼の高さも同じくらい。

少し目尻の下がった
きらきらした瞳で
真っ直ぐに私を見詰める。
少し戸惑いの色が混じっている。

「ダメ?」

少し首を傾げて言うと

「さすがにこれは・・・。」

と苦笑した。

私は手にしていた
ピンクのメモを机に戻し
不要紙を
適当な大きさに切って
クリップで留めたものを
差し出した。

「じゃ、こっちね。」

「こちらの方が助かります。」

そう言ってメモを受け取った時、
彼が見せた微笑みは
穏やかで爽やかで、
蒸した職員室の空気を
一掃するかのようだった。

「はい、ペン。」

かーっと顔に
熱が篭るのを感じて
私は慌てて下を向く。

適当に筆記具を掴んで彼に渡す。

「ありがとうございます。」

彼はペンを持って
目的の先生の机へと
私に背を向けた。