「お前ら、ぜってぇ気色悪い!」

「何?妬いてんの?」

生徒玄関で上がる
楽しげな声に
誘われるように
そちらを見遣ると
3年生の男子達が
じゃれ合っている。

その中の大柄な男の子が
彼よりも一回り小さな男の子に
背後から
覆いかぶさるように抱きついた。

「やめろ、悟!」

抱きつかれた子が
上げた声にどきっとした。
江良くんの声だった。

「いいじゃねぇか、
 減るもんじゃなし。」

大柄な子は
悪びれもせずに言う。

「ほら、お前らホモだろっ!」

周りの男の子達が
囃し立てている。

「僕はごめんだよ!」

腹を立てたような
素振りを見せながら
それでも笑いながら
大柄な子を振り払って
江良くんは
くるりと身体の向きを変えた。

そして私に気が付いた。