「いらっしゃいませ。」

ガラスの衝立の前に置いた
華奢な台の上のボタンを押せば
ナチュラルな
木目の仕切りの奥から現れて
私を迎えてくれるのは
可愛らしい若い女性。
明るい茶色に染めた肩までの髪を
緩くカールさせて
目元にポイントを置いたメイク。
なによりも弾けんばかりの若さ。

「先日
 お電話させていただいた
 三条ですが・・・。」

随分可愛らしい子を
側に置いているのね、

と幾分ジェラシーを感じる一方で
諦めという敗北感もまた感じる。

「お聞きしております、
 こちらへどうぞ。」

きちんと教育された接し方で
彼女は私を衝立の奥へと促す。
私の先に立って歩くその後姿を
私は観察する。

ライトグレーの
柔らかなラインのスーツ。
フレアスカートは
わずかに膝上の長さ。
その下から
すらりとしたふくらはぎが伸びて
足元は
型押しの黒の7・8センチはある
細いヒール。

ベージュのカーペットに
その靴音は鳴らないけれど
きっとアスファルトの上では
プライドと若さを
響かせるのだろう。

「こちらでお待ち下さい。」

ナチュラルな木目調のドアを押し開けて
彼女は奥のほうのイスを指し示した。

「どうもありがとう。」

ここまで案内してくれたことに対して
礼を言うと
彼女は黙って頭を下げ
ドアを閉めて行ってしまった。