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スマホの画面に映し出される地図と、目の前にそびえるマンションを何度も確かめる。
けれど、目的地のピンは確かにここに刺さっていた。
外観を捉えると、首が痛くなるほどの立派なタワーマンション。
シンプルモダンなエントランスには、専用のコンシェルジュが付いていた。
「承っております」
司の部屋の番号を伝えると、コンシェルジュの男性はエレベーターへと促した。
エレベーターが上昇すると、都内の夜景が眼下に落ちていく。
その煌めきが非日常的な美しさで、どこかの高級なホテルにいるような感覚になった。
教わった部屋番号の前にたどり着く。
ルームナンバーがシンプルに書かれたドアは、やはり住居というよりホテルの一室を思わせた。
インターホンを押そうとした時、ドアが開いて司が顔を出した。
「遅いんだけど」
「すみません、迷って…」
「こんなに目立つ建物見つけるのに、どうやったら迷うのか」
やれやれと零す司は、美桜を中へと促す。
お邪魔します、とためらいがちに後を付いていく。