「あ、鳴ってるよ」
 
 賑わう店内の中で、音が埋もれてしまったスマホが光っている。
 
 手に取り画面を見ると、ぎくりと美桜の手が止まった。


「わっ、司さんから? 早く出なよ」

 急かすように言われ、勢いで通話ボタンを押す。


「はい、もしもし」

『美桜?』


 耳元で司の声が響き、どきりと心臓が跳ねる。

 チームを組んだ以上、すぐに連絡が取れるようにと先ほど連絡先を交換したばかりだった。


「は、はい」

 ぎこちなく返事をすると、


『なんか騒がしいな──まぁ、いいや』

 少し気だるい声で司が続ける。


「すみません、今…」

 店内の喧騒を避けるように立ち上がろうとした時、

『今から集合。じゃ』

「えっ、え?」

 一方的に早口で告げられる。


 戸惑っている間に会話は途切れ、画面の通話時間がストップした。


「なんだって? わが社の王子様は」

「わかんないけど…今から、集合って…」

「今から? 急だね」


 意味がわからず画面を眺めていると、すぐにメッセージが届いた。

 それを開くと英数字のアドレスが載っている。

 触れてみると、地図アプリが開いた。


「ここに来いってことじゃない? ていうか」

 一緒に覗き込む志保が言う。


「もしかして、ここ司さんの自宅じゃないの?」