あわててスマホを取って二人に背を向けた私の手を、悠君が掴んだ。



「沙羅、待てって！」



息の詰まった声でそう言われたけれど、悠君がどうしてこんなところで、こんなことをしているのか全然わからなくて、思い切り手を振り払ってしまった。



「気安く名前とか呼ばないで」



「俺はただ心配で」



「私あなたのことなんか、知りません」



悠君の悲痛な声を遮ろうとした私の声のほうが震えてた。



「心配ってなに？あなたはここの店員さんでしょ？なのに仕事を途中で投げ出すんだね。働いてお金をもらうって、そんなに適当なことなんだ？」



二人に動揺を悟られないよう、くるりと背中を向けて京ちゃん達が待っている席に戻ると、水を飲んで呼吸を整えようとした。



怒りまかせに啖呵を切ってしまった。
ずっとドキドキしてるし、膝も震えてる。
京ちゃんたちにそれがバレないか不安で仕方ない。



せっかく雅ちゃんが誘ってくれたのに、楽しい女子会を台無しにしたくない。
こっそりと、深く息をついた。