その日は客が少ない日だった。



少しでも 彼女の気を惹きたいと思って俺は CDを渡したんだ。



1ヶ月程前から店に通ってくれている彼女。

音楽の事 映画の事 少しずつ話していくうちに惹かれていた。



まっすぐ見つめて話す 少し高めの声 年上に見えない可愛らしい笑顔  



よくあるバーテンと客 そんな関係から脱したくて CDを渡したんだ。



彼女が好きそうな曲 恋の歌 ベタな演出

臆病な俺はこれ以上踏み込んでいいものか悩む。



彼女の笑顔が アルコールによるものか 好意によるものか

カウンターの中からでは 分からない 他の客であればある程度読めるのに

彼女の事だけは 分からない。